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【スタートアップ協業】大企業とスタートアップの協業がうまくいかない最大の理由

  • Yas Kohaya
  • Jan 30, 2021
  • 5 min read

Updated: Jan 31, 2021

日系企業と米国スタートアップの協業が盛んだ。スタートアップのスピードについていけなかったり、大企業の理屈をスタートアップに一方的に押しつけるなど、今でも課題は残っているが、成功事例も出てきており、(今はコロナ禍で人の行き来が一時的に止まっているものの)大企業がスタートアップからイノベーションを求めるトレンドは今後も変わらないだろう。


しかし、私が長年スタートアップ協業を経験してきて、日本人或いは日系企業が乗り越えることができない根本的な問題が残っていると感じている。それは日本人が「変化への対応に弱い」ということだ。


日本人は計画性を重んじる性格を持ち、時間をかけて緻密な計画を立て、関係者と念入りな摺り合わせを行い、着実に実行することに長けている。一度決めたことはやり通す粘り強さも兼ね備えている。また、過去の歴史を通じて先輩方から脈々と受け継がれてきた経験ややり方を尊重し継承する礼儀さもある。それは日本人の素晴らしいところで世界から尊敬される理由でもあるのだが、一方で新しいことをやろうとするとうまくいかないことが多い。


なぜ日本人は変化への対応に弱いのだろうか?それは日本人は「他人に迷惑をかけてはいけない」という性質を持っているからだと思う。


例えば、一度決めた設計を変更する必要が出てきたとする。それは性能向上、軽量化、簡素化など、理由は様々だろう。スタートアップであれば全員が集まって必要性に納得いけば「ではやろう!」と即座に動き出すものが、日本の大企業だとそうはいかない。「なぜ今頃になって変えるのか?」「事前検討が不十分だったのではないか?」「設計者が自分勝手にやりたがっているだけではないのか?」「日程、質量、コストへの影響は?」「リスク対策はちゃんと考えたのか?」など、質問攻めに遭う。


勿論、開発ステージによって変更していい場合と良くない場合はある。しかし(以前のブログでも紹介した通り)スタートアップはスピードが命で、全ての答えが揃っていなくても必要であればとにかく速いサイクルで試して改善していかなければ生き残れない。一方で、日本人は同調意識が高いので、どうしても関係者に迷惑をかけてはいけない、責任を問われたくない、という意識が先行してしまい、行動を起こすことに躊躇してしまう。


その原因を更に追求すると、日系企業は社員一人一人の権限や知識の幅が狭く、多くの利害関係者の合意形成によって組織的に行動する傾向が強いために意思決定のスピードが遅い、という課題に突き当たる。特に、前例がなくて規則化されていないことに対しては誰一人も権限を持っていないので、周囲の意見を気にして空気を読みながら、そして上司や役員にお伺いを立てながら慎重に進める。しかし誰一人として何が正しいかは判断できないので、結局は前例を踏襲することしかできない。責任を問われたくないから前例踏襲主義を貫いた方が楽、という本音もあるだろう。例え変更の必要性は理解できたとしても、計画を立て直し、関係者と再度摺り合わせ、やることを議論しているうちに時間を費やしてしまうので、本当にやる必要があるのか、という堂々巡りなことになる。


ところが、そんな足踏みをしている間に、スタートアップはもう実行して次に進んでしまっている。


これまで日本の企業は過去の実績から学び、PDCAを繰り返すことで成長してきたが、今や先が読めなく不透明さが増すこの世の中、悠長なことをやっている余裕はなく、過去の成功に縛られる硬直的な組織のままでは生きていけない。


余談ではあるが、年末年始に一時帰国していたのだが、コロナが猛威を奮っているというのに街中はいつもの如く人で溢れかえっていて非常に驚いた。カリフォルニア州の状況も悲惨ではあるが、少なくともシリコンバレー界隈の人々のコロナ対策の徹底ぶりは大したもので、きちんとソーシャル・ディスタンスが取れていなかったり、マスクをしていないと赤の他人でも注意されるぐらいだ。それに比べてなぜ普段は規則正しく衛生管理意識も高い日本人がこうにもコロナに対してずさんなのか、しばらく理解に苦しんだが、これも「前例のない変化への対応の弱さ」なのだろうという結論にたどり着いた。つまり、在宅勤務を推奨されてもなんとなく上司や同僚に迷惑をかけたくないし、周囲を見渡しても普通に生活しているように見えるので、まあマスクさえしていれば大丈夫だろう、といつのまにか気を緩めてしまう。これも前例踏襲主義と同じだ。一方でJobyはどうかと言うと、即座に(ごく一部の社員を除いて)ほぼ全社員が在宅勤務に切替え、しかも起業精神が旺盛なCEOはなんとPCR検査会社まで設立してしまい、今や全社員が毎日PCR検査を受けれる体制を敷いている。日本人だったら「製造業がウィルス検査会社なんて立ち上げていいのか?もし検査ミスでも発生したら責任を負えるのか?」などと反対意見に押されてそんな企画は通らないだろうから、eVTOLを開発している会社がPCR検査会社をスピンアウトしてしまったなど日本人からすればびっくり仰天であろう。しかし、そんなことよりも(検査が足りないという)世の中のニーズに答えることの方がよっぽど重要で、大企業、スタートアップを問わずそうやって即実行することで個人・組織は進化していくのではないかと思う。


ダイナミック・ケイパビリティ論で有名な米カリフォルニア大学バークレー校 デビッド・ティース教授も、日経ビジネスの記事で日系企業に対してこう警告を鳴らしている。「日本はこれまで物事を『正しくやる』ことで成功してきた。トヨタ生産方式は物事を正しくやるシステムだ。しかし『正しいことをやる』というのは別の問題で、イノベーションや知識創造に関わる。どうイノベーションを起こすか。日本はずっとそれが課題だと言われてきた。」


これから日本企業も、常に変化する消費者の指向や世界情勢に対して臨機応変になり、必要なときには前例を無視してでも大胆に、そして果敢に変化に立ち向かっていかなければ生き残れないだろう。たとえ全ての答えが揃っていなくて失敗したとしても、トライすること自体が自身の「新たな能力や知識」となって蓄積されて、組織力としても強化されていくはずだ。


それを学ぶ最高の手段がスタートアップとの協業なのではないかと思う。


 
 
 

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